パーソナリティの類型と特性
パーソナリティ [臨床心理士試験用語]とは、人の性格や人格のことです。
能力・性格・気質の3つから構成されます。
パーソナリティを捉えるための理論には、
類型論と
特性論の2点があります。
類型論:性格や特徴で分類
人の性格や特徴をタイプに分けてわかろうとしたり、分けたりする方法。
たとえば、血液型や体型などによって性格を分類するのは、類型論です。
- 類型論の長所
人の性格や人格のざっくりした特徴をさっと見つけられ、全体像がすぐに目に浮かぶところ。
- 類型論の短所
人のこまかい特徴が、見えない。
個人の性格や気質の多様性、変化性を無視して、画一的に分類。
タイプに当てはまらない人のことが、説明できない。
代表的な類型論には、クレッチマーの類型論、シェルドンの類型論、ユングの類型論、シュプランガーの類型論があります。
クレッチマーの類型論:体型
クレッチマーは、ドイツの医学者で精神科医。
クレッチマーの類型論では、体格や体型から分類をしており、現代の視点からは偏見に満ちているといえます。
人の性格や気質を体格や体型によって、以下の3つの類型に分類しています。
- 細長型
静かで控えめで真面目。
自然や読書などの静かな趣味を好む。
感受性が過敏。
神経質で、興奮しやすい一方、無関心で、冷淡な面もある。
人との距離感がうまく取れない。
真面目で、純粋で、正直だが、頑固で、融通が効かない。
孤独な理想家や冷たい支配者に多い。
人前では臆病で恥ずかしがり。
人前で従順な態度をとる一方、内面では自分の考えに固執し、他者の言動に過敏に反応する。
何事にも真面目に受け取る。
冗談が通じない。
- 肥満型
気分が高揚したり沈んだりする波が大きく、周期的に繰り返され、変動によって、行動や判断が大きく左右する。
気分の高揚期には、社交的で楽観的で自信に満ちた言動をする。
気分の沈み期には、憂鬱で消極的で自己否定的な言動をする。
- 闘士型
熱中しやすい。
頑固で融通が効かない。
粘着気質で、物事にこだわりやすい。
几帳面で細かなことに固執する。
ささいなことで怒り出す。
回りくどい話し方をする。
シェルドンの類型論:胚葉タイプ
シェルドンの類型論は、アメリカの心理学者であるウィリアム・シェルドンが、1940年に人の性格や気質を、体格や体型の違いによって、3つの類型(胚葉タイプ)に分類したものです。
シェルドンは、胎生期における胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)の発達の度合いで、以下の3つの類型に人の体格や体型が決まると考えました。
誕生する赤子は、まずは細胞の塊から始まり、それらの細胞は、胚葉という3つの層に分かれ、体の基礎を育んでいきます。
外胚葉は皮膚や髪の毛を作り、中胚葉は骨や筋肉、内胚葉は胃や腸を作ります。
- 内胚葉型(肥満型)
内臓器官が発達した、柔らかくて丸い体型。
社交的で生活を楽しむ。
楽をするのが好きで、だらだらしている。
自己満足で、自分の欲求を優先する。
感情的で、喜怒哀楽が激しい。
寛容な性格。
- 中胚葉型(筋肉型)
筋肉や骨が発達した頑丈な体型。
活動的で自己主張する。
権力欲がある。
大胆で率直。
荒々しい攻撃性を持つ。
苦痛に対して強い。
- 外胚葉型(やせ型)
神経系や感覚器官が発達した、痩せた体型。
知的欲求が強く、理論や概念を理解することが得意
分析的で、論理的に物事を考える
非社交的で、人前に出るのを好まない
過敏で、神経質で、心配性。
感情を出すのは抑えがちで、顔や態度に見せない。
苦痛に対して弱い。
- シェルドンの類型論の問題点
体格や体型は遺伝的な要因だけでなく、栄養や運動などの環境的な要因にも影響されるので、一様に分類することはできない。
体の大きさや体型、性格、気質は、性格と関連していることもあるけれど、必ずしもそうとは限らない。
ユングの類型論:内向型と外向型
ユングの類型論は、スイスの精神分析家であるカール・グスタフ・ユングが、1921年に出版した『心理学的類型』で提唱した、性格および人格を、8つの類型に分けた分類法です。
- 内向的思考型
自分の内なる世界に興味があり、論理的に物事を考える。
- 外向的思考型
外の世界に興味があり、客観的なデータや事実を重視する。
- 内向的感情型
自分の感情や価値観に基づいて判断する。
- 外向的感情型
他人の感情や価値観に影響されやすく、社交的で寛容。
- 内向的感覚型
自分の体験や経験に重きを置く。
- 外向的感覚型
外界の刺激や現実に敏感で、実践的で具体的。
- 内向的直観型
自分の直観やひらめきに頼る。
- 外向的直観型
未来の可能性や変化に目が向く。
さらに8つの類型は、以下の3つの要素によって決まるとしました。
- 態度
内向(自分の内なる世界に向かう)か外向(外の世界に向かう)か。
- 合理的機能
思考(論理性)か感情(価値観)か。
- 非合理的機能
感覚(体験や経験)か直観(ひらめきや第六感)か。
- ユングの類型論の問題点
類型は固定的で変化しないという前提に基づいているが、実際には人の性格は状況や成長によって変化する。
客観的な証拠や統計的な裏付けが、不十分。
個人の性格や人格を単純化しすぎており、個々の違いやニュアンスを無視している。
ユングは、これらの要素のうち、一つの態度と一つの機能が意識に現れて優越するとし、それ以外の要素は無意識に抑圧されるとしました。
ユングは、心の奥底にある想いを明らかにすることで、自己実現につながるとしました。
シュプランガーの類型論:文化的価値
シュプランガーの類型論は、1921年にエドゥアルト・シュプランガーが出版した『生の形式』で提唱した、性格や人格の分類法です。
シュプランガーは、人がどの領域に文化的価値をおいているかによって、以下の6つの類型に分けました。
- 理論型
客観的な視点から、論理的に考え、真理を追求する。
- 経済型
利己的な観点から、損得勘定で考え、利益を追求する。
- 権力型
支配的な欲求から、勝ち負けで考え、地位を追求する。
- 審美・芸術型
美的な感性から、感覚的に考え、美を追求する。
- 宗教型
精神的な目線から、超自然的に考え、神秘を追求する。
- 社会型
協調性の重視から、献身的に考え、愛情を追求する。
- シュプランガーの類型論の問題点
類型は固定的で変化しない前提に基づいているが、実際には人間の性格は状況や成長によって変化する。
客観的な証拠や統計的な裏付けが不十分。
個人の性格や人格を単純化しすぎており、個々の違いやニュアンスを無視している。
特性論:考え方や行動で分類
性格や人格は、いろいろな「特性」というものでできているとし、特性は、人の考え方や行動の傾向を表します。
特性がどんなものがあって、どう組み合わされているかで、性格や人格をみる方法です。
たとえば、外向性や調和性などの特性がどの程度備わっているかという量的な側面から、性格を測るのが特性論です。
- 特性論の長所
個人の詳細な特徴を把握することができます。
- 特性論の短所
性格や人格をみる時は、いろいろな特性を考慮する必要があります。
特性は、人の考え方や行動の傾向をあらわします。
一方、特性は何種類あるのか、どういう意味なのかが、はっきりしないことが多いです。
だから、性格や人格の全体像をつかむのは、難しいのです。
特性論の代表的な理論には、オールポートの特性論、アイゼンクの特性論、キャッテルの特性論があります。
オールポートの特性論:趣味や信念
アメリカの心理学者ゴードン・オールポートが1937年に出版した、『パーソナリティー心理学的解釈』で提唱した、人の性格や人格を調べる方法。
人の性格を、多くの人が持っている共通の特徴である
共通特性と、その人だけが持っている個人の特徴である
個人特性に分け、言葉で表せる重要な特徴を集めて、性格を分析しました。これを、語彙仮説といいます。
- 共通特性
他者と比較できる特性
例)外向性、神経症傾向など
- 個人特性
他者と比較できない特性
例)趣味、信念など
- オールポートの特性論の問題点
固定的で変化しない前提に基づいているが、実のところ、性格は状況や成長によって変化する。
客観的な証拠や統計的な裏付けが不十分。
個人の性格や人格を単純化しすぎており、個々の違いやニュアンスを無視している。
アイゼンクの特性論:内向と外向
アイゼンクの特性論は、1947年に 、イギリスの心理学者であるハンス・ユルゲン・アイゼンクが出版した『人格の次元』で、性格を「内向性-外向性と神経症傾向の2次元」および「精神病傾向を加えた3次元」に分類したもの。
アイゼンクは、人の性格を、特定の反応、習慣的反応、特性、類型の4つの階層から構成されているとしました。
性格は、3つの大きな要素で分かれ、アイゼンクは3つの次元を用いて、性格検査を作成しました。
これは、因子分析という統計方法でおこなったものです。
因子分析は、たくさんのデータから、共通の傾向を見つけ出す方法。
性格の3つの要素は、それぞれが人の考え方や行動に影響を与えます。
- 内向性と外向性
自分の内なる世界に向かうか、外の世界に向かうか。
- 神経症傾向
感情的に安定しているか、不安定か。
- 精神病傾向
現実との調和を保てるか、保てないか。
- アイゼンクの特性論の問題点
性格は固定的で変化しない前提に基づいているが、実際のところ、性格は状況や成長によって変化する。
客観的な証拠や統計的な裏付けが不十分。
個人の性格や人格を単純化しすぎており、個々の違いやニュアンスを無視している。
キャッテルの特性論:考え方と行動
アメリカの心理学者であるレイモンド・バーナード・キャッテルが1949年に出版した、『パーソナリティーの理論と測定』で提唱した特性論。
人の性格を、
心理的特性と
質的特性に分けています。
- 心理的特性
性格は、いろんな特性でできています。
特性は、人の考え方や行動の傾向を表し、性格の中で、一番小さい単位であらわす特性。
見たり、測ったりできる特性です。
- 質的特性
性格を構成する特性のうち、個人的かつ、観察や測定が困難な特性。
さらに、個人の特性を
共通特性と
独自特性の2種類に分類しています。
- 共通特性
性格を構成する心理的特性のうち、多くの人に共通する特性。
- 独自特性
性格を構成する心理的特性のうち、その人だけが持っている特性。
さらに独自特性を観察可能な
表面特性と観察不能な要因
根源特性として研究しました。
- 表面特性
性格を構成する心理的特性のうち、外部から観察できる表面的な特性。
- 根源特性
性格を構成する心理的特性のうち、外部から観察できない内面的な特性。
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