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投影性同一化
:他者に影響を与える心理

投影性同一化
:他者に影響を与える心理

会話しているイメージ
 
投影性同一化(とうえいせいどういつか)[臨床心理士試験用語]とは、自分の中の感情や考えを他者に押し付けることで、相手にも同じような感情や考えを抱かせるメカニズムです。

自分が不安を感じているときに、相手にその不安を伝えようと働きかけることで、相手も不安を感じるようになるというものです。投影性同一化は無意識に行われるため、本人は気づかないうちに相手に影響を与えています。

こうした行動は、本人が抱えている感情を外部に表出し、自己理解を助けたり、不安や不満を和らげたりする手段となることもある一方、相手に負担をかけてしまうこともあります。

カウンセリングの場面では、クライアントが感じる不安や怒りがカウンセラーに投影されることがあり、その感情を通してクライアントの心情を理解しようとします。

投影性同一化は他者と自分の間に感情や思考の「共有」が起こる複雑なメカニズムであり、カウンセリングにおいてクライアントの内面を深く理解するための一助となります。

投影と防衛機制:感情を他者に映す

ムードが悪い二人のイメージ
 
人は自分の中で受け入れがたい感情や考えを、他者に「投影」することがあります。これは「防衛機制」と呼ばれる心の働きの一つで、無意識のうちに自分を守ろうとする反応です。

自分の中にある「不安」や「怒り」などのネガティブな感情が、自分ではなく他人のものだと感じることで、自分の心のバランスを保とうとするのです。

具体的に言えば、自分が実は不安を感じているのに、「周りの人が不安に感じている」と思い込むようなことです。自分の抱えている感情をあたかも他人のものであるかのように無意識に感じることで、自分の感情とは距離を置き、心の平穏を保とうとするのです。

「投影」は、私たちが自分の中で対処しきれない感情や特徴に対処するための自然なメカニズムなのです。ただし投影が過度になりすぎれば、他者との関係に影響が出たり、自分の問題を直視しにくくしたり可能性があります。

他者の感情に引きずられないために

怒っている二人のイメージ
 
投影された感情や考えが相手に影響を与えることはよくあります。投影とは、自分の中にある感情や考えを無意識に他人に移す心理的な働きのことです。

投影を受けた相手は、それを自分のものと感じ始め、自分の感情や行動に影響が出ることがあります。これを「同一化」といいます。

たとえば、カウンセリングの場面ではクライエント(相談者)が強い不安を抱えていると、そんな不安がセラピスト(相談を受ける人)にも伝わり、セラピスト自身もその不安を感じるようになることがあります。

セラピストは自分の感情とクライエントから受け取った感情の区別がつきにくくなることがあり、その結果としてクライエントと似た気持ちや行動を取ってしまう場合があります。このような投影と同一化のメカニズムは、私たちの日常生活でも見られます。

友人が強い不安や怒りを抱えているとき、話を聞いている自分も同じように不安になったり、イライラしたりする経験はありませんか?投影と同一化は、他者との関係性や共感の深まりにもつながる一方で、自分自身の感情と区別することが難しくなるため、相手に引きずられないように気をつける必要があります。

投影性同一化と役割の押し付け

困っている親子のイメージ
 
投影性同一化とは、自分の感情や考えを相手に投影し、それを相手が自分のものだと感じてしまう心理的な現象です。そんな影響で、投影を受けた相手は実際に投影された感情や態度をとることがあります。

こうした投影が繰り返されると、投影した側とされた側の間に強い心理的な影響関係が生まれ、特に親密で長期的な関係ではそんな影響が強くなりやすいです。

たとえば親子関係では、母親が自分の不安や不満を子どもに投影することで、子どもは「自分が不安定だから母親が心配している」と感じるようになります。

そして、子どもは不安な気持ちを抱えたり、不安定な行動をしたり、母親を安心させようと過剰に気を使ったりするようになります。つまり、母親の不安が子どもに「伝わり」、そんな影響で子どもが不安を感じたり、落ち着かない行動をとるようになっていくのです。

このように、投影性同一化によって、お互いの感情が影響し合い、無意識のうちに相手に特定の役割を押し付けたり、相手の行動や感情を変えてしまったりすることがあります。

感情に飲み込まれないために

相談中のイメージ
 
投影性同一化においては、クライエントが自分の感情を無意識のうちにカウンセラーに押し付けるような現象も存在します。

たとえば、カウンセラーがクライエントの感情をまるで自分のもののように感じ始めることがあります。クライエントが不安を抱えているとき、カウンセラーも理由なく不安を感じてしまうケースがあるのです。

こうした状況が起こると、カウンセラーの気持ちや反応が助言に影響を及ぼすことがあります。

そこでカウンセラーは、自分自身が本当に感じていることに気づき、本当に自分の気持ちなのか、それともクライエントの影響を受けているのかを見極める必要があります。自分の感情を冷静に観察し、必要に応じて客観的な立場を保つようにしてください。

投影性同一化を理解することで、カウンセラーはクライエントの感情を適切に受け止め、効果的なサポートを提供できるようになります。

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