認知行動療法とは?効果や概要、歴史を解説
認知行動療法[公認心理師・臨床心理士試験用語]とは、自分の考え方や行動パターンを変えることで、ストレスや不安などの心の問題を改善するための心理療法。
認知とは、物事を受けとめる気持ちや、判断する感覚のことです。
認知行動療法では、物事のとらえ方が現実とはかけ離れて、考え方にかたよりがでることで、気持ちや行動に悪影響を与え、行動が不適切になったり、物事を回避したりすることで、心の問題や状況が悪化すると考えます。
認知行動療法をおこなうことで、自分の考え方および行動の良からぬパターンに気づき、気持ちや状況を改善することを目指します。
認知行動療法のプロセス
認知行動療法は、以下のような段階で進めます。
1)問題を分析する
以下について、検証します。
- どんなことでストレスを感じるか。
- 頭に自動的に浮かぶ考えが、現実に起きていることと
一致しているか。
もしも、物事のとらえ方が現実とずれていて、良からぬ発想になっている場合は、より適切かつ希望ある考え方に変えるように心がけていきます。
2)目標および行動を設定する
問題を解決するために、自分がどうなりたいか、どうしたいかを明確にし、具体的かつ達成が可能な目標を設定したうえで、行動にうつります。
認知行動療法の歴史
第一世代の認知行動療法
1920年代~
1920年代にパブロフやスキナーによって学習理論に基づいて発展した、行動にアプローチして問題を解決する心理療法が始まります。
学習理論とは、人間の行動は環境との相互作用によって形成されるという考え方です。
第一世代の認知行動療法では、不適切な行動は不適切な学習によって生じたものと考えます。
そのため、不適切な行動を改善するには、新たな学習をうながし、行動が変化することによって問題が解決するとしています。
しかし次第に、行動だけではなく、思考や感情へのアプローチが必要であるという課題が発生。
第二世代の認知行動療法へと発展していきます。
第一世代の認知行動療法には、以下の技法があります。
- 暴露療法
不安や恐怖を引き起こす出来事に、繰り返し直面させることで、不安や恐怖の反応を減らす。
- 系統的脱感作法
不安や恐怖を引き起こす刺激に対して、リラックスした状態で徐々に接近させることで、不安や恐怖の反応を消失させる。
- 強化法
望ましい行動を増やすために、報酬や賞賛などのポジティブな刺激を与える。
- トークンエコノミー
望ましい行動を増やすために、行動に応じてトークン(ポイントやチケットなど)を与え、後で報酬と交換できるようにする。
- タイムアウト
望ましくない行動を減らすために、行動に応じて刺激のある環境から刺激のない環境に移動させる。
- モデリング
望ましい行動を学ぶために、先生や親などの行動を観察し、お手本にする。
第二世代の認知行動療法
1970年代~
1970年代から、行動と認知の両方にアプローチする第二世代の認知行動療法が始まります。
第二世代の認知行動療法では、感情や行動は出来事そのものではなく、出来事に対する考え方や解釈によって決まると考えるようになりました。
不適切な考え方や解釈を修正することで、感情や行動を変えることができるというその療法は、不安やうつを改善することに効果があるとしました。
一方、認知の機能やプロセスにアプローチする必要があるという課題が発生。
次第に、第三世代の認知行動療法へと発展します。
第二世代の認知行動療法には、以下の技法があります。
- 認知療法
アーロン・ベックが開発した療法。頭に自動的に浮かぶ考えやスキーマと呼ばれる認知のゆがみを修正することで、うつ病や不安障害を改善することを目指します。
認知療法では、スキーマや自動的に浮かぶ考えを発見し、検証し、修正することで、認知のゆがみを解消し、心の問題を解決することを目指します。
スキーマとは:
幼少期や青年期に形成され、過去の経験や環境に影響されて育まれた、自分や世界に対する固定的な信念や価値観のことです。
スキーマは、頭に自動的に浮かぶ考えや、とっさに感じる気持ちに影響を与えています。
スキーマや自動的に浮かぶ考えが現実とずれると、偏った考え、すなわち認知のゆがみを引き起こします。
- 論理情動行動療法
アルバート・エリスが開発した療法。
適切ではない思い込みを発見し、合理的な気持ちへと変換、反駁することで、感情や行動の問題およびうつ病や不安障害を改善することを目指します。
※論理療法では、以下のことを行います。
どんなことで悩むか、どんな気持ちや思い込みが起こっているかを観察します。
自動的に浮かぶ考えが、現実と合っているかどうかをチェックしたうえで、現実とずれている場合は、より現実的な考え方に変えていくように心がけます。
問題を解決するために必要な行動を計画し、実行していきます。
論理療法の理論的な枠組みを、ABC理論といいます。
AはACTIVATING EVENT(出来事)で、ストレスや困難。
BはBELIEF SYSTEM(信念体系)、出来事に対する自分の考えや判断。
CはCONSEQUENCE(結果)、気持ちや行動として現れる自分の反応。
論理療法では、A:出来事が直接 C:結果を引き起こすのではなく、B:信念体系が C:結果に影響を与えると考えます。
B:信念体系には、合理的な考え方(ラショナル・ビリーフ)と非合理的な考え方(イラショナル・ビリーフ)があります。
イラショナル・ビリーフ
事実ではない、論理的でない、柔軟性がない、幸せになれないという考え方。
イラショナル・ビリーフは自分や他者に対して、「~しなければならない」「~でなければならない」といった圧をかけ、不快な気持ちや行動を引き起こします。
論理療法では、イラショナル・ビリーフを発見し、修正することを目指します。
イラショナル・ビリーフが論理的でないこと、現実的でないこと、実用的でないことを証明し、より合理的な考え方(ラショナル・ビリーフ)に変えることで、適切な感情や行動を生み出すことを目指します。
自己教示訓練(認知行動修正法)
ドナルド・マイケンバウムが開発した療法。
自分の考えや言葉を考察し、それらをより適切なものに変えることで、ストレスや不安に対処できるようになることを目指します。
自己教示訓練によって、自分の行動や考え方をコントロールする能力を高めることができます。
※自己教示訓練の方法は、以下の通りです。
- 自分に起こる問題や目標を、明確にする。
- 自分が問題や目標に対して、どのように考えているかを自覚する。
- 自分の考え方が、問題や目標の達成に役立つかどうかを考察する。
- 問題や目標の達成に役立ち、なおかつ、前向きかつ建設的な自分へのメッセージを作成する。
- 前向きかつ建設的な自分へのメッセージを声に出したり、心の中で繰り返したりする。
- 前向きかつ建設的な自分へのメッセージに従って行動する。
- 行動の結果を考察し、自分へのメッセージや行動を修正する。
問題解決療法
ディズリラとゴールドフリードが提唱した療法。
自分に起きる問題を明確にして、解決策を考え、問題に対処するスキルを学びます。
問題解決療法は、不安や抑うつなどを改善することに、効果があります。
この療法では、以下の5つのステップを通して問題を明確にし、解決策を探り、実行します。
- 問題解決志向性
問題をどのように捉えるか、考えるかについての態度や信念を自己認識し、変化するようにつとめる。
- 問題の明確化
問題を具体的に定義し、目標を設定する。
- 解決策の産出
できるだけ多くの解決策を考え出す。
- 意思決定
解決策の良い点と悪い点を比較し、最も有効なものを選択する。
- 解決策の実行と評価
選択した解決策を実行し、態度や行動の結果によって、必要に応じて修正する。
第三世代の認知行動療法
1990年代~
第三世代の認知行動療法は、認知の変化よりも認知を受け止めたり、関係性に重点を置いたりする、1990年代から始まった新しい療法です。
ネガティブな感情を改善することにはこだわらず、適度な距離を保ちながら、客観的に状況を見つめ、改善を図ります。
代表的なものに、マインドフルネス認知療法やアクセプタンス&コミットメント・セラピーがあります。
これらの手法には、精神の安定への効果があり、第一世代や第二世代の認知行動療法とは異なるアプローチで、現代の精神療法に大きく寄与しています。
第三世代の認知行動療法には、以下の技法があります。
- マインドフルネス認知療法
自分の気持ちと距離を置きながら、出来事に対する自分のとらえ方を受け入れ、生きやすい環境を構築していきます。
- アクセプタンス & コミットメントセラピー
マインドフルネスを基盤とした認知行動療法。
自分の気持ちを受容しながら、大切にしたい価値観に焦点を当てて行動します。
- 弁証法的行動療法
アメリカの心理学者マーシャ・ライネハンが開発した、認知行動療法の一種。
境界性パーソナリティ障害や自傷行為などの問題を抱える人に対しての治療に、特化しています。
瞑想やマインドフルネスなどの技法を用いて、自分の感情や行動を受容しつつ、変化することを目指します。
この療法では、自分自身が変わることと自己受容することのバランスが重要であるとしています。
弁証法的行動療法は、以下の4つの技法を組み合わせて行います。
- マインドフルネス
現在の状況に注意を向け、自分自身を受け入れる。
- 対人関係保持
人間関係を円滑にするためのスキルを身につける。
- 感情抑制
感情をコントロールするためのスキルを身につける。
- 苦悩耐性
苦しみに耐えられるようになるためのスキルを身につける。
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