気質とは?行動に影響する感情の個性
気質 [臨床心理士試験用語]とは、人が生まれながらに持っている特徴。
遺伝や体のしくみ、脳の働きによって決まり、人それぞれの行動や感じ方に影響を与えています。
気質は成長したり周囲の状況が変わったりすることによって、変化が起きる一方、ずっと同じような傾向を見せることもあります。
気質研究の代表的なものに、アメリカの精神科医であり、心理学者でもある、
トーマス(ALEXANDER THOMAS)と
チェス(STELLA CHESS)による
ニューヨーク縦断研究があります。
彼らは夫婦であり、ともにニューヨーク大学の教授。
この研究は、ニューヨーク在住の中流および上流家庭の子ども136名を対象に、乳児期から青年期までの気質の個人差を調べておこなわれました。
この研究では、子どもの気質を9つの特性に分けて、それらの組み合わせによって4つの気質のタイプを提唱。
子育てや教育の分野に、大きな影響を与えました。
気質の理解は、それぞれの特徴や行動傾向を尊重し、適切な支援や対応を行うための参考となります。
活動水準:身体の動きと活発さ
身体の動きの活発さや、動かす時間の割合をあらわす気質。
性格や発達に、影響を与えます。
- 活動水準が高い人
動き回ることが大好きで、活発でエネルギッシュ。
集中力や自制力は低くなりがち。
学習および友人関係が、困難になることがあります。
- 活動水準が低い人
静かで落ち着いており、じっとしていることを好みます。
好奇心や積極性が低くなりがち。
新しい経験に対しては、消極的です。
生物学的機能の規則性:生活リズム
睡眠・食事・排せつなどの生理的な行動が、どれだけ規則正しくおこなわれるかを示します。
子どもの気分や機嫌に影響を与えます。
- 生物学的機能の規則性が高い人
毎日同じ時間に眠りについたり、起きたりする。
精神的に安定していて、機嫌が良いことが多い。
新しい環境に、適応しやすい。
- 生物学的機能の規則性が低い人
睡眠や食事のリズムが、不安定でバラバラ。
気分が不安定で、機嫌が悪い時が多い。
新しい環境には、適応しにくい。
新しい刺激に対する接近と尻込み:好奇心の度合い
新たな事柄に対して、積極的に近づけるか、避けようとするかの違いです。
好奇心や探究心に影響を与えます。
- 接近傾向が高い人
初めて見る人や動物に対して、興味を持って近づいたり触ったりする。
新しい物事に対して、積極的に学ぶ意欲がある。
- 回避傾向が高い人
初めて見る人や動物に対して、不安や恐怖を感じ、泣いたり逃げたりする。
新しい物事に対して、消極的になりやすい。
最初の反応に続く新しい状況への順応性:新たな環境への適応
新しい状況や環境、人間関係、物事に対しての、適応できる度合いをあらわします。
順応性は、子どもの社会的な関わりや学習に影響を与えます。
- 順応性が高い人
初めての学校や職場に行っても、すぐに同級生や同僚、先輩に慣れる。
新しいことにはチャレンジしやすく、自信を持ちやすい。
- 順応性が低い人
初めての場所や人に対しては、なじめなかったり不安を感じたりする。
新しいことには消極的。
自分には無理だと思ってしまったり、失敗を恐れて行動しなくなったりする。
自分の能力や結果に対してネガティブな評価をする。
感覚的応答性のしきい値:五感の敏感さ
ある反応や行動を引き出すための刺激の強さが、どれくらいかの違いをあらわします。
五感の敏感さに影響を与えます。
- しきい値が低い人
音や匂い、味、触感などに敏感に反応する。
刺激が強すぎると不快に感じたり、ストレスを感じたりする。
- しきい値が高い人
音や匂い、味、触感などの刺激に鈍感。
刺激が弱すぎると退屈に感じたり、興味を持ちにくかったりする。
情動的反応の強度:感情表現の豊かさ
見たり聞いたりしたものや、おなかが空いたりした時に、感じたり、動いたり、声を出したりする反応の度合いをあらわします。
たとえば、同じ音を聞いても、びっくりしたり、気にならなかったりします。
人によって、反応の強さは違っており、気持ちの表現力やコントロールに影響を与えます。
- 情動的反応の強度が高い人
嬉しいことがあるとものすごく喜び、悲しいことがあれば大泣きする。
感情表現および、表情が豊か。
感情の起伏が激しく、自己調整が難しい。
- 情動的反応の強度が低い人
嬉しいことや悲しいことがあっても、あまり感情を表に出さない。
感情が淡白で表情が乏しい。
感情の起伏が穏やかで、自己調整が容易。
気分の全般的な肯定性対否定性:気分の表現
快・不快の刺激をどれくらい感じやすいか、どれくらい直接的に表現するかの違いをあらわします。
機嫌や精神状態に影響を与えます。
- 気分の全般的な肯定性対否定性が高い人
楽しいことがあれば笑顔になり、嫌なことがあれば率直に怒る。
明るくてポジティブ。
自己肯定感および自尊心が高い。
- 気分の全般的な肯定性対否定性が低い人
楽しいことや嫌なことがあっても、あまり感情を表に出さない。
暗くてネガティブ。
自己否定感および自尊心が低い。
行動の可変性:集中力と飽きっぽさ
ある行動をやめたり変えたりするのに、どう強く言われたりしないといけないかの違いです。
注意力や集中力に影響を与えます。
- 行動の可変性が高い人
何らかをしている時。他の出来事に気を取られては、すぐにやめてしまう。
または、一つの出来事に夢中になっては、他の事がらにはまったく気づかなくなってしまう。
多様な出来事に敏感。柔軟に行動を変えることができる。
刺激が多すぎると混乱し、刺激が少なければ退屈する。
- 行動の可変性が低い人
何らかをしている時。他の出来事に気を取られても、別の行動には移らない。
何らかに飽きたとしても、他の事がらには、反応しない。
同じ行動を延々続けることができる。
刺激が多すぎると無視、刺激が少なければ満足する。
注意の幅と持続性:没頭
一つの事柄に注意を向けるか、複数の事柄に注意を向けるかの違いと、活動の持続時間とそれが妨害された時の執着の度合いの違いをあらわします。
学習や創造性に影響を与えます。
- 注意の幅が狭くて持続性が高い人
1つの出来事に夢中になり、長時間没頭したり、途中で邪魔されてもやり直したりすることができる。
深く集中して、一つのことを習得する。
困難に直面しても、粘り強く取り組む。
- 注意の幅が広くて持続性が低い
色々な出来事に興味を持っては、すぐに変更したり、邪魔されるとすぐに諦めたりする。
多様なことに興味を持ち、発想力が豊か。
困難に直面すれば、すぐにあきらめる。
トーマスとチェスの気質の4タイプ
トーマスとチェスは、9つの気質の組み合わせから、以下の4つのタイプに分類しました。
扱いやすい人:物事に対して順応。
親や上司にとって、関わりやすい。
問題行動を起こさない人。
- 特徴
睡眠や食事などの生理的な行動が規則的。
新しい状況や物事に対しては、好奇心を持って接し、順応が早い。
機嫌が良く、精神状態が安定している。
扱いにくい人:精神状態が不安定。
親や上司にとって、関わりにくい。
問題行動が多い人として、見られがち。
- 特徴
睡眠や食事などの生理的な行動が不安定。
機嫌が悪い。
精神状態が不安定。
怒りやすい。
新しい状況や物事に対して不安を感じて回避。順応は遅い。
順応が遅い:挑戦や変化が苦手。
新しい状況や物事にたいして、不安を感じて回避しがち。
新しい環境に対する適応力に乏しい。
- 特徴
睡眠や食事などの生理的機能は安定していて、規則的。
いつも機嫌が良くて、精神的に安定しています。
新しいことに挑戦するのが苦手で、変化に対応するのに時間がかかります。
自分のペースで物事を進めることができれば、安心して活動します。
新しいことに対する不安を解消することで、自信や達成感を得ることができます。
- 関わり方
遅い順応に対して、無理に新しいことをさせるのではなく、徐々に慣れるように配慮する必要があります。
その人らしいペースを尊重して焦らせず、励ましながらの支援をすることが大切。
新しいことに挑戦する楽しさや意義を伝え、興味やモチベーションが高まる支援をしましょう。
平均的な人:強みや興味を知ろう。
特別に優れているところや、劣っているところはない。
扱いやすい人や扱いにくい人、順応が遅い子人比べて、目立った特徴がないため、見過ごされがちです。
平均的な人は、自分の気質に合った環境や人間関係を見つけることで、自分らしく成長できます。
自分の気質と異なるタイプの人との関わり方を学ぶことで、柔軟性や協調性を身につけることができます。
- 関わり方
持っている強みや興味を伸ばすようなサポートをしましょう。
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