箱庭療法とは?効果や概要を解説
箱庭療法[公認心理師・臨床心理士試験用語]とは、砂の入った箱にミニチュアを自由に配置し、相談者の無意識や内面の世界を表現する心理療法です。子どもから大人まで、言語能力に関係なく実施できるのが利点です。
表現することおよび、カウンセラーとの会話を通して、相談者の内面や未来に対する願望、潜在能力を発見しやすくなります。
人や動物、乗り物や建物などの種類や数、色、形、大きさ、位置、関係性から相談者の人間関係や自己像、願望、葛藤、問題などがあらわれてきます。
箱庭療法は、ユング派の心理学に基づいており、箱庭の中に現れる水や火、建物、動物などは、ユング心理学での
集合的無意識や
元型が投影されます。
とはいえ、それによる分析はあくまでも仮説とし、相談者に対しては、「ミニチュアをどうとらえているか」を確認することが必要です。
集合的無意識とは
個人ではなく、この世に生きるすべての人の歴史や文化に根ざした、共通する無意識の領域のこと。
一方、個人的無意識は、個人の経験や記憶に基づいて形成される無意識のことです。
ユングは、夢や世界各地の神話やおとぎ話、芸術に共通するモチーフや象徴があるのは、人類が進化していく過程で重要な影響を与えた記憶やパターンが集合的無意識に存在するからだと考えました。
集合的無意識には、元型と呼ばれる基本的な型が存在します。
- 元型とは
人類共通のイメージやパターンのこと。
たとえば、母、父、英雄、悪魔など。
元型は、夢や神話、芸術などに象徴的に表現されることがあります。
また、人の気持ちや願望、潜在能力を理解する手がかりとなります。
箱庭療法で自己理解と表現力を得る
カタルシス効果
箱庭を制作しながらの、カウンセラーとの対話を通して、抑圧された感情や葛藤を発散し、心の状態を改善することができます。
- 洞察効果
箱庭を制作しながら、自己の内面を語ることによって、自分自身の気持ちや願望に気づけるようになります。
- 創造性効果
箱庭を制作することによって、想像力や表現力を発揮し、表現力や創造性、問題解決能力を高めることができます。
箱庭療法で用意するもの
- 砂箱
縦57cm×横72cm×高さ7cmの木箱で、内側は青く塗られています。
箱庭療法で使う箱の大きさは上記の通りに決まっており、相談者に安心感や自由度を与えるために、腰の高さで置いたときに全体を見渡せる大きさとなっています。
- ミニチュア
人や動物、乗り物、建物、植物など
- 砂
砂の高さは、2~3cm程度が適切です。
砂箱が青い理由と砂を使う理由
水は、無意識や感情、生命力を象徴しています。
砂箱の内側が青く塗られていることで、相談者が砂を掘って水を出したり、川や湖、海を作ったりすることで、無意識や感情、生命力が表現され、心の奥底にある問題や願望、潜在能力が現れやすくなります。
砂は形が変化しやすく、さらに、相談者の感情や想像力があらわれやすく、大地とのつながりを感じさせる素材であるとされています。
また、砂に触れることで手の感覚が刺激され、癒しの効果があります。
箱庭療法をおこなう手順
相談者は、ミニチュアを自由に選び、砂箱の中で並べます。
カウンセラーは、相談者の表現方法に干渉したり、解釈したりしないことが原則です。
相談者が箱庭の制作を終えたら、何を置いたか、どんな意味があるか、どんな気持ちがあるかについて、自由に語ります。
カウンセラーは、相談者の話を聞きながら、質問したり、共感したりして、相談者の箱庭の表現に対して、自分の感想や印象を伝えます。
この時に、カウンセラーの解釈を押し付けたり、評価したりはせず、相談者の主観にそって、客観的でいる必要があります。
ミニチュアの配置から分析する
箱庭へのミニチュアの位置や向き、種類や色、砂の平らさや凸凹具合から、相談者の心境を読み取ります。
たとえば、ミニチュアが大きくて赤い場合は、強い感情や衝動を表しており、小さくて青い場合は、冷静さや理性をあらわします。
箱庭の中央に置く場合は、自分の中心や核となるものがあらわれ、他のミニチュアに向けられている場合は、親密感や攻撃、守りがあらわれています。
ただし、上記のような分析はあくまで仮説であり、実際には相談者に聞いて、想いを確認する必要があります。
箱庭療法での水辺の分析方法
水の面積、水の中や周りに置くもの、水の形や流れを観察することで、相談者が自覚していない心境や願望を理解します。
- 水の面積が広い
自覚していない願望や気持ちを、理解しようとしている。
- 水の形や流れ
水が平らで静かなら、穏やかな心境をあらわし、水が波立っていたり、渦巻いていたりすれば、混乱や動揺をあらわします。
- 水の近くに柵や枠を置く
水から守られたいイメージです。
- 水の中に魚やカエルを置く
水は無意識や感情をあらわす象徴。水と陸は、無意識と意識、感情と理性、内面と外面などの対立や分離をあらわします。
魚やカエルは水と陸を行き来する生物。二つの世界をつなぐ役割があります。
そのため、相談者が自分の無意識や感情に気づき、意識や理性と調和したいのです。
魚やカエルは自分の内面と外面の間に橋渡しをする存在として表現されます。
たとえば、自分の内面で感じていることと、他者に向けてあらわしていることとの違いや、人間関係における仲介役です。
箱庭療法での砂の凹凸から分析
砂の平らさが、心の平穏や安定をあらわす一方、凹凸さは、心の動揺や不安をあらわします。
砂箱の中に、山や谷をつくる場合。山は自分の目標や理想、力や自信を表す象徴であり、谷は自分の苦しみや挫折、弱さや恐れをあらわす象徴です。
箱庭療法で人を置く場合の分析
人は自己や人格の象徴として、あらわれます。
- 自分を表現する場合
自己像やアイデンティティをあらわします。
- 他者を表現する場合
対人関係や役割をあらわします。
- 英雄である場合
自分の目標や理想をあらわします。
- 悪者である場合
自分の罪や罰、恐怖や苦しみをあらわします。
箱庭療法で生物を置く場合の分析
- 生物が人や他の生物に近づいている場合
自分の本能や欲望に気づき、他者とのつながりを感じようとしています。
- 動物が人や他の生物に襲ったり、噛みついたりしている場合
罪や罰、恐怖や苦しみをあらわしています。
- 鳥が人や生物に近づいている場合
鳥は霊性や高い意識の象徴。
自分の霊性や高い意識に気づき、他者とのつながりを感じようとしています。
- 卵や巣がある場合
成長や変化をあらわしています。
箱庭療法で乗り物を置く場合の分析
乗り物は、移動や進行、変化、成長、目標や理想に向かう象徴として表現されます。
箱庭療法で建物を置く場合の分析
建物は自分の居場所や安全な場所および、自分の自己像やアイデンティティの象徴として表現されます。
箱庭療法で火を置く場合の分析
火は、強い感情や衝動をあらわし、木や草などを燃やしている場合は、破壊や浄化をあらわしています。
箱庭療法で橋を置く場合の分析
橋は、内面と外面の間に橋渡しをする存在および、目標や理想、力や自信を表す象徴として表現されます。
また、橋の高さや長さ、強度や安定性からは、目標や理想に対する姿勢や自信を読み取ることができます。
- 橋は二つの世界をつなぐ
橋が置かれた場所や関係性には、つなぎたい世界があらわれています。
- 橋が水と陸をつないでいる場合
無意識と意識、感情と理性などの対立や分離を乗りこえようとしていることを、あらわしています。
- 橋の上や下にあるもの
内面で感じていることと、他人に向けて現していることとの違いや、人間関係における仲介役をあらわしています。
箱庭療法で島を置く場合の分析
島は、他とは分断されている場所です。
また、自分の内なる世界や自己の本質および、成長や変化をあらわす元型として表現されます。
島が置かれた場所や大きさ、形などから、相談者がどのような世界や領域から分離しているのか、または分離したいのかを観察します。
- 島を中央に置く場合
自分らしさを、あらわしています。
- 島を隅に置く場合
周囲から孤立していることを、あらわしています。
- 島に人や動物を置く場合
島が自分のプライベートな空間や大切な人、ものを守る場所として、表現されています。
- 島の周りに水や橋がある場合
島が自分の無意識や感情、内面と外面の間にある橋渡しの役割をしています。
箱庭療法で何も置かない場合
空間は、自分の内面やプライベートな場所をあらわす象徴。
何も置かない場合の心境は、あくまでも相談者によって異なります。
何も置かないことを否定したり、強制的に何かを置かせたりはせずに、まずは何も置かなかった理由から、会話を深めましょう。
自己表現が苦手だったり、無欲だったり、自分を隠したいという想いがある場合。何も置かないことで表現している可能性があります。
また、睡眠不足やストレスで疲れている場合には、何も置かないことで心労状態をあらわしているのかもしれません。
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